あしあと。

九州→関東在住。ライブラリアン。あるいてきたことを、ちょこちょこと。ふりかえったとき、自分なりの道になっていますように。

まちの文化が、いつしか歴史になり、資料になる。

福岡県福岡市博多区櫛田神社(創建757年)。
古くから福岡・博多にある、歴史ある神社です。
夏の、博多祇園山笠の舞台としても、全国的におなじみ。

先月まで、櫛田神社近くにある歴史資料館・博多町家ふるさと館にて開館20周年特別展『櫛田文庫展』が公開されており、
"日本初の町人図書館!"というキャッチフレーズにひかれ、先月末、会期も終盤にあわてて見に行ってきました。
博多町家ふるさと館、「日本初の町人図書館!博多の「櫛田文庫」展」を開催(10/11-11/30) | カレントアウェアネス・ポータル
(イベント終了)日本初の町人図書館!博多の「櫛田文庫」展 | 博多秋博

中に入り、2階フロアへ。
説明パネルと収集された図書(実物!)の展示。
写真NGだったので、概要をメモ。


成り立ち:文政元年(1818 : 江戸時代中~後期)始まり - 文政五年(1822)に藩より取止めの命。但しそれ以降も蔵書が増えたとの伝聞あり(実質的に継続?)

中心人物:黒田藩重鎮・岸田文平、奉行・井出勘七、国学者青柳種信、櫛田社人・天野恒久。天野は文庫主管となる。

蔵書は博多町人より寄贈。
利用も博多町人のみ。武士の身分でも博多に関係がなければ不可。貸出30日、曝書7月。

取止めになった理由:若者が本ばっかり読んで風紀が乱れたから(!)
・・・ホントは町人に知識をつけさせたくなかったのかなあ?(個人的な推測)

参考文献: 菊地租図書館論集(櫛田文庫顛末との項目)、日本図書館史、福岡県史通史編など。
櫛田神社古文書として博多櫛田宮御文庫創立始末書(櫛田文庫出納之定十三条)、も。
菊池租図書館学論集 - Webcat Plus
日本図書館史 - Webcat Plus
現在閲覧できる古文書資料(福岡市総合図書館 / 櫛田神社に関する古文書あり)


同じ福岡県内にもうひとつ、桜井文庫というのもあったそう。
(文政八年:1825年、糸島の桜井神社。)こちらも気になるなぁ。

あと、他県だと江戸時代の文庫は、江戸の浅草文庫や、仙台に青柳館文庫、というのがあったそうです。
浅草文庫 - Wikipedia
青柳文庫 - Wikipedia


あ、長谷川法政さんのマンガがわかりやすかった!



面白かったー。自分も福岡出身ながら、この文庫の存在、今まで知りませんでした。
江戸時代、博多町人による寄贈図書館、その創立と運営に奔走した人びと、たった4年で文庫取止めの命を受けた理由。それらの記録がこうやって残って、後世に伝えられているということ。
特別展だけの公開じゃもったいないくらいの充実さでした。どっか、県立図書館か市立図書館とかでそのまま常設してくれたらいいのにな。写真NGだったの残念。
追記 : 櫛田神社内に博多歴史館という資料館があるので、そちらで展示されるかも?
神社博物館事典WEB版 - 櫛田神社・博多歴史館



しかし福岡市といえば、支店経済の街というイメージで、これまであまり歴史的な面が目立たなかったのですが(観光などにおいても、福岡市内はショッピングやグルメを楽しみ、歴史は太宰府天満宮へという流れが通例)、
ここ近年、昨年度のNHK大河ドラマ軍師官兵衛の舞台であったり、今年9月にブラタモリで博多・福岡特集が組まれたり、昭和の博多を舞台にした博多華丸主演のドラマ『めんたいぴりり』が話題になったりと、様々な歴史の場面にスポットライトがあたっている印象を受けます。
地元福岡の劇団、ギンギラ太陽'sの『天神開拓史』という近代~現代の福岡市内の商業の発展を描いた作品も、今年久々に上演されたし。

あらためて、普段暮らしている何気ない風景のなかに
澱のように歴史が重なっているのだなあと。



まちの毎日のささいな出来事が記録となり、いつしか歴史となり、
アーカイブ(保存・伝承)される。
いまを生きている自分たちの周りの出来事も、先々もしかするとこんなふうに伝えられたりするのかもしれない、とふと妄想して、楽しい気分になりました。
(本に関していえば、Bookuokaだったり、Library Lover's だったり、福岡市図書館マンス、だったりが、のちのち櫛田文庫のように語り継がれたら、面白いなぁ♪)